di先生と男が苦手な食堂の女の話⑨⑩

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妄想、捏造、想像、なんでも許せる人向けです。

[di先生と男が苦手な食堂の女の話⑨]

 

自分の顔の横に落ちた変わった形の手裏剣・・・

そのまま、目だけではなく、顔ごと横を向くと、すぐそこに暗闇に紛れるように真っ黒な服に身を包んだ男が天井から音もなく降りてきた。

目元しか見えない男が片膝をついて座っているのが、ぼんやりと見えた。

「di先生…。」

言葉にした途端、今までの緊張感が解け、大粒の涙が夢の頬を伝う…。

diは素早い動きで服の中に仕込んでおいた出席簿(硬さMAX)を取り出し、城主の頭を思い切りぶっ叩き、怯んだスキに夢から引き離す。

diは夢の体をゆっくりと起こすとグッと抱きしめ、夢の耳元でささやく

「もう大丈夫です。ここからは、私の話に合わせてください。」

急に抱きしめられて、驚いた夢はコクコクと頷く。

耳元から口元を離し、今度は正面から鼻がくっつきそうなほど顔を近づけてdiは続ける。

「遅くなってしまってすみませんでした。こんなに冷たくて、傷だらけで…よく、耐えましたね。生きていてよかった。」

そう言って夢の涙を優しい手つきでぬぐう。そのままどこから出したのか、苦無を使って夢の手の縄を切り落とす。

「di先生…来てくれて嬉しいです。」

夢は泣きながらこたえ、やっと使えるようになった両手でdiの真っ黒な忍び装束にしがみつく。

 

「貴様忍か!!!その女は私の側室じゃー!」

「あなたの側室ではありません。私の妻に手を出さないで頂きたい!!!」

「は、hnskさん!!助けて!!」

夢はさっきよりもdiにしがみつき、必死に妻を演じる。

 

城主がこちらに向かってくるのがわかると夢はdiの胸に顔を押し付けて見ないように視線を逃がす。

 

diは先程の硬い出席簿で再び城主をパシンと叩き、今度は気絶させる。

「よし。あとはymd先生やtb先生に任せて帰りましょう。」

「先生たちも来てくださったのですか?」

「はい。夢さんを救出しようとお二人で頑張ってくれていますが……周りが静かなので、もう終わったかもしれませんね!この程度の城の規模ならあの二人には簡単でしょうから。さっ、帰りましょう。」

「はい。ありがとうございました。やっと体が動けるようになってきたので、歩けると思います。そろそろ離してくれませんか?」

diはずっと夢を横抱きにしたまま話していた。

「私達が来るのが遅くなって派手に殴られてしまってあちこち怪我もしていて痛そうですよ。なので、私が抱えて帰ります!」

「ええ?いいえ!そんな!私はこの通り大きい女なので、重いですよ!ゆっくりなら歩けますから。」

「もし追手がきたとして、移動がゆっくりだと困るのでこのまま行きます!!」

 

よっと!

と言ったかと思うと軽々と夢を横抱きにしたまま立ち上がるdi

そのまま走り出し、ymd先生やtb先生が制圧済みの静かになった城をあっという間に抜けて、森の木をトントン飛び越えながら移動していく。

 

「私は絶対に夢さんを落としませんから!ただ、揺れますので、舌を噛まないようにだけ気をつけてくださいね〜。」

「わかりました。」

 

あまりにも速くて木は高くて…経験したことのない浮遊感と速度。夢は怖くて、両腕を胸の前で組んで縮こまっていた。

しかし、夢を抱きかかえるdiの腕は意外と太く、逞しい…。徐々に緊張は解けていく。

そして気が付く。

あれ?

私は男の人と接近するのダメなんじゃなかったっけ……?

あの時のことを思い出して………

どうしてdi先生は大丈夫なんだろう…?

食堂で隣りに座っても、町へ買い物に行っても、抱きしめられて涙を拭いてもらっても……?

現に今、横抱きにされ、運ばれている・・・

木々の間を走るdiの表情を下から見るが、真っ黒な忍び装束と口布でよくわからない…。

 

di先生に自分のトラウマになっている過去の話をしたら、なんて言うのだろうか?

否定されたら・・・・?「汚らわしい」なんて思われたら・・・?

怖い。せっかく仲良くなって食堂で会えることが楽しくて仕方ないのに・・・

もし、拒絶されたら、あの食堂を出ていかなくてはならない・・・

 

でも・・・私のことを知ってほしい・・・

覚悟を決めて、キュッとdiの服を握る。

「あの、di先生?聞いてほしいことがあるんです。」

「ん?なんですか?」

夢は自分のトラウマのことを話すことにした。

 

 

㊟若干の性被害描写有

 

「あの…。私の話を聞いて、穢らわしいと思ったら置いてってください。薬も抜けてきたので、歩いて帰れますから。」

そう前置きをしたがdiはさらに夢を抱く腕に力を入れる。

「どんなことを聞いても離しません。置いてもいきません。ゆっくりでいいですし、無理もしなくていいですから、話せるところだけを話してください。」

そんなに優しく言われたらまた泣きそうになる……

唇を噛んで涙を落ち着かせる。

しばらく沈黙してから夢はポツポツと話し出す。

「…………………。私は何年か前に家に訪ねてきた男の人に襲われたことがあります。一度や二度ではありません。何度も…。でもいつも両親が気づいて助けてくれたのでその……さ、最後まではされずに済んでいるのですが…。それでも、力で押さえつけられて、無理やり着物を脱がされたり、……あちこち触られたり、……舐められたり、、そういった感覚は忘れることができなくて。男の人を避けるようになりました。そうして避けていても、時々思い出してしまって、倒れてしまうんです。」

先日は大変ご迷惑をおかけしました、と言ったあたりでまた涙がこぼれそうになるのを必死に耐える。

 

diは黙って聞いていた。

自分の辛い記憶と戦って、言葉が途切れたり、泣かないよう耐えていることが伝わっていたから。

「男の人と並んで歩きたくない。」そう言った夢の気持ちがようやく理解できた。

好きでもない男から体を触られるのは辛かったろうに・・・。

思い出して倒れてしまうほどの辛い記憶・・・。

diは夢を癒してあげたいと思うと同時にどんな人からも守りたいと強く思った。

抱きかかえる腕にさらに力を強める。

 

そうこうしていると、diが「着きましたよ」と一軒の家の前で立ち止まって言った。

夢はずっと学園に帰っていると思っていたので若干困惑していた。

 

攫われたのは昼過ぎだったのにすっかり夜になって辺りは真っ暗だった。

一体ここは学園からどのあたりなのだろう・・・

「ここは?」

「私の家です。学園だと夢さんを心配していたたくさんの生徒たちが来てゆっくりできないかと思ってここに来ました。私は外で見張りますから、夢さんは中へ。krmrが掃除をしてくれたのでキレイになっていますよ。そうだ、体を拭いたほうがいいので、そのお湯を用意します。その後、私は外にでますから、ゆっくり休んでくださいね。」

diは夢を抱えたまま家に入り、囲炉裏の前に座らせる。火をつけ、その上に鍋を吊るして水を温める……。

 

ゆらめく火を見つめながら、手を伸ばしたりして体をあたためる。

diは夢の隣に座って優しく語りかける。

「夢さん、先ほどは辛いことを話してくださって、ありがとうございました。」

「いいえ。聞いてくださってありがとうございました。」

「倒れてしまったときは驚きましたが、今日話を聞いて、その、何と言ったらいいか・・・。」

「私、やっぱり出ていきます。」立ち上がろうとして、diに手首をつかまれて再び座らされる。

「穢らわしいなんて思いません!!!夢さんは何も悪くない!」

夢は初めて見るdiの真剣な眼差しに驚くと同時に、自分がずっととらわれていた過去を受け止めてくれたことが嬉しくて下を向いて静かに涙を流した。

「・・・・di先生、ありがとうございます。」

diはそっと夢の背中をさすって落ち着くのを待ってくれた。その手が温かくてなかなか涙が止まらない。

 

「・・・・あの。さっきは外で見張るって言ってくれましたが、今夜は一緒にいてくれませんか?一人で部屋にいるのは怖いんです。」

「わかりました。では、こうしましょう。夢さん、私にやってほしいことを言ってください。今夜私は夢さんに言われたことだけをします。それ以外は絶対にしません。私が何かするときは、ことわりを入れますね。」

「・・・は、はい!わかりました。ありがとうございます。あのでは、さっそくなのですが・・・」

「なんでもいいですよ。最初は何をしましょうか。」

「・・・その・・・・・お湯が沸くまでの間、………あの………抱きしめてくれませんか……?」

 

夢は自分でも驚く発言をする。

恥ずかしくて、下を向く。きっと今顔が真っ赤だ。

それでも、言わずにはいられなかった。

忘れられなかった…。城の中でギュっと抱きしめられた感覚を………先程までずっと抱きかかえられていた、あの力強い腕や体のぬくもり、diの匂いが……

ずっと包まれていたい……

その感情が溢れてしまいそうだった。

その感覚のおかげなのか、城主にされたことや暴力の記憶は薄れていた。

 

「わかりました。では。」

そう言うとdiは夢をそっと包む様に抱きしめた。

 

 

 

続きます。

 

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